カラオケルームで出会う、予想外の美食
KTV(台湾式カラオケ)の本体、それはもしかすると「歌うこと」ではないのかもしれない。
台湾全土にあるカラオケチェーン『銭櫃(Cashbox)』の牛肉麺(ニューローメン)。それは長年、一種の都市伝説として語り継がれている。だが、それが伝説となった理由は、単に味が良いからだけではない。我々の人生の「ある重要な瞬間」に、必ずと言っていいほど登場するからだ。
味について言えば、名店のような気取った演出は何もない。適度に筋が入った肉の塊、コシのある麺、あっさりとしたスープ、そして欠かせないスプーン一杯の「酸菜(高菜の漬物)」。非常にシンプルだ。 だが、「たかがカラオケ店の飯」と侮るなかれ。その場の感情をごちゃ混ぜにして、気づけば2分半で真剣に一杯を完食してしまうのだ。
君が食べているのは、その場の空気であり、青春であり、そして思い出だ。
この牛肉麺は、まるで個室の照明スタッフのようなもの。あくまで脇役だが、肝心な場面でその場の雰囲気を決定づけている。

灯火(ともしび)が消えかかる場所で、人生の断片をつなぎ合わせる
何かを祝う時、誰かと別れる時。
『銭櫃』という場所は、間違いなく数えきれないほどの悲喜こもごもを背負ってきた。
僕たちはここに「集団的記憶」を預けることに慣れている。だからこそ、作詞家の林夕は数々の名曲のタイトルを繋ぎ合わせて『K歌之王(カラオケの王)』という曲を作り、僕たちもまた、この見慣れた個室の四つの壁の中で、人生の断片をつなぎ合わせるのだ。
(歌詞) 期待你感動 真實的我們難相處 (君が感動してくれることを期待して……でも現実の僕らは相性が悪い) 寫詞的讓我 唱出你要的幸福 (作詞家は僕に、君が望む幸せを歌わせようとする)
誰曾經感動 分手的關頭才懂得 (かつて誰が感動しただろうか、別れ際になってようやく理解するんだ) 離開排行榜 更銘心刻骨 (ヒットチャートから消えた方が、より心に深く刻まれるのだと)
飲み込んだのは、高揚感か、それとも虚無感か?
この麺を、君はいつもどのタイミングで食べていただろうか?
まだ始まったばかりで、みんなが曲を入れ始め、酒もまだ届いていない頃。「今夜の戦い」に備えて胃袋を満たしておく時だろうか? その時飲み込むのは、「慷慨激昂(やる気と高揚感)」だ。
それとも、終了30分前のカウントダウンの時だろうか。定番曲は歌い尽くし、泣くべき涙も流し終え、ふと巨大な虚しさに襲われる瞬間。画面には、タイミングよくこの曲が流れる。
歌詞を見る必要はない。一句一句が、心に刻まれているからだ。
(歌詞) 我已經相信 有些人我永遠不必等 (僕はもう信じている、永遠に待つ必要のない人がいることを)
所以我明白 在燈火闌珊處 為什麼會哭 (だから分かったんだ、灯火が消えかかる場所で、なぜ涙が出るのかを)
讓我斷了氣 鐵了心愛的過火 (息の根を止めてくれ、心変わりするほど愛しすぎて)一回頭就找到出路 (振り返ればすぐに出口は見つかるはず)
讓我成為了無情的K歌之王 麥克風都讓我征服 (僕を無情なカラオケの王にしてくれ、マイクさえも征服してやる)
叫び終われば出口が見つかると思っていた。だが結局、自分はただの「無情なカラオケの王」になっただけだった。 曲が終わり、パラパラとお情け程度の拍手が鳴る5秒間の静寂。その中で、君は少し冷めてしまった牛肉麺を黙々とかき込む。
飲み込んだものが、パーティーの余韻なのか、それとも散会前の寂しさなのか、自分でも分からないままに。

この麺の味付けは、僕たちの喜怒哀楽だ
『銭櫃』の牛肉麺が美味しいのは、もはやスープや肉質だけのせいではない。あまりにも多くの思い出を乗せているからだ。
君が覚えているあの味は、人生の酸いも甘いも噛み分けた、喜怒哀楽の後味だ。
それは恋愛中の夜、抱擁とキスと一緒に飲み込んだ甘美な味。
そして失恋した夜、涙とアルコールと一緒に飲み込んだ、しょっぱい酸菜の味。
多くの場合、君が覚えているのは、その時の背景で流れていたメロディだ。
そして、そのメロディの中に隠れている「思い出すべき誰か」のことだ。
(歌詞) 「我想來一個吻別 作為結束」 (別れのキスをして、終わりにしたい) 「想不到你只說我不許哭 不讓我領悟」 (まさか君が「泣くな」とだけ言い、僕に悟らせてもくれないなんて)
永遠に一緒に歌い続けてくれると思っていたその人は、結局、歌本(デンモク)の履歴から消えてしまった。
歳をとると、KTVで喉が張り裂けんばかりに絶叫することは少なくなる。喉も人生も、そんな激しい消耗にはもう耐えられないからだ。 だが、あの泣いて笑った記憶は、この牛肉麺の香りとBGMのように、薄暗く、少しタバコと酒の匂いがする個室の中に、永遠に冷凍保存されているのだ。 (翻訳者注): 文中で引用されている『K歌之王(カラオケの王)』は、香港の歌手イーソン・チャン(陳奕迅)の代表曲です。

えー、ずるい!私も行きたかった!.....誕生日おめでとう!
お前、全然老けてないな。時が止まってるんじゃない?